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たからもの物語 [8]ビデオカバー&保険会社 Blue Cross

Baby Model Story

J、1歳と5か月。髪の毛の先が天然カールなの、分かるかな?
  体重約12キロ、身長約83センチ。
 

11月中旬
11月14日の昼過ぎ、Jと私はハリウッドのスタジオに、ビデオパッケージのカバー撮影に行った。Baby songs というビデオシリーズの仕事だ。予算の少ない仕事らしく、服は自前(笑)。「なん着か持ってきてください」って事なので、冬物と、ちょっと小さくなっちゃってたけど、夏に着ていた服など、4〜5パターン持っていく。これがなかなかの荷物で、大変(^^;)。
スタジオに行くと、控え室はがらーんとしていた。撮影スケジュールを見ると、撮影には、9人の子供が呼ばれていて、一人約1時間づつでスケジュールが組まれていた。JはちょっとだけJの前に撮影をしていた赤ちゃん(9か月のサバナちゃん・白人の女の子)と一緒のショットを写されたけど、あとは一人での撮影だった。予算がないのが見え見えの撮影で、スタッフは、カメラマンと、アートディレクターと、そのアシスタントだけ。スタジオティーチャーも付かなかった(驚)。
Jは、お昼寝時間が近づいてきたせいか、後半、広いスタジオの後ろの方で、かけてある音楽に合わせてご機嫌で踊ったりしているくせに、ライティングがしてあるカメラの前に行くのを嫌がっちゃって、撮影現場で私、初めててこずりました(汗)。で、思わず彼女のご機嫌をとるために出た言葉が「アイスクリーム!」。この一言でJは、満面の笑顔。スタッフが笑いだすほど現金に、超ご機嫌の笑顔を作ってくれました。あぁ、でもちょっと親としてギルティを感じてしまった。家に帰ったら、ちゃんとアイスクリーム、あげなくちゃ・・・。
撮影は本当に小一時間で終了。帰りの車に乗るなりJは、ぐっすり。もう、本当に眠かったんだね。初めて撮影でぐずったりしたけど、「アイスクリーム」に救われて、かなりいいショットは撮れたようです。

ところで、友人のキャスティングディレクターに、Jがbaby GAP の仕事で世界的に使われた話しをしたら、「じゃぁ、Jちゃん、相当稼いだでしょ」と言われ、「え?」と・・・。
なんでも彼女の話しによると、プリントモノの仕事でも、Usage fee(使用料)というのが出るんだそうで、世界的規模でJの写真が使われたならば、使った分だけギャラが出るはず、とのこと。それでさっそくエージェントに問い合わせたら、なんと、GAP とか、GUESS とかディズニーとか、有名どころの服飾ブランドは、notoriously cheap (悪名高く安い)らしく、ギャラは撮影時の「時給のみ」で、モデルにしたら、そうした有名ブランドの仕事が出来ることがステータスで、自分の写真がより多くの人に見てもらえるチャンスとなる・・・んだそうだ。でも、1歳児に、モデルのステータスも何も、関係ないじゃんねーーーーー(と、声を大にする私<笑)。
だから、例えば baby GAP の撮影に来ていた、約20数名の赤ちゃんモデル達、撮影後に自分の写真が広告に使われようと、使われなくても、全員、同じように「時給」でペイされたきりだって事。いくらお金のために娘にモデルをさせているわけじゃなくても、なんか、世界中に写真が使われたのに、「時給のみ」って、ちょっと淋しい(;;)。
でも、雑誌で使われたのは、別ギャラが派生するらしく、Jの写真はアメリカでも日本でも雑誌広告になったので、エージェントは現在、このギャラを請求すべく、頑張ってくれているようです。ちなみに、エージェントによると、ギャラで行くなら、有名な服飾ブランドの仕事より、保険会社とか、銀行とかの印刷モノの仕事の方が、ちゃんと usage fee (使用料)が出るんで、いいんですって。

12月上旬
同じ日に、ディズニーカタログと、有名デパート MACY*S のオーディションが入った。朝の9時から12時までにディズニーは行けばよかったけれど、MACY*S は昼の12時と時間が決められていたので、まず午前中、10時半頃にディズニーのオーディションに行き、そのあと MACY*S のオーディションに。ディズニーはバーバンクというところで、MACY*S はハリウッド。なかなか、サンタモニカ近郊の我が家からだと、ぐるっとロスアンゼルスを回る、けっこうなドライブの距離になります。Jのお昼のことも考えなくちゃだから、かなり大変。。。。
前の晩、怖い夢でも見たのか、午前4時過ぎと朝の6時に、突然大泣きして起きたJは、この日、朝になってもなんか元気がなくて、オーディションに向かう車の中で、私が何を話しかけても、ぼーっとしたまま、リアクションなし。ディズニーでも、MACY*S でも、ポラドイド写真を撮るとき、ほとんど笑わず、無表情に近かったので、「こりゃ、ダメだな・・・」
でも翌日、MACY*S の仕事で hold が入って、正直びっくりした(@@)。確かに、オーディションスタッフには、「まぁ、なんて可愛いのぉ〜〜」とウケていたJだけど、あんなオーディション写真で、ねぇ・・・。 この撮影、2日後の土曜日に仮押さえとなっていたのだけれど、結局撮影は、次の週の16日に決定しました。

昨年(2000年)の秋のキャンペーンモデルをしたJの baby Gap のポスターはすでにはずされていて、本来ならば、ディスプレイ用のポスターは、「絶対に売ったり、譲渡しない」という会社のポリシーがあって入手できないものだそうで・・(;;)。
私も色々な baby GAP のお店にお願いしてみたんだけど、「ゴメンなさい、あげられないの」と、断われていました。また、「送ってあげます」なぁ〜〜んて調子のいいことを言っていた店舗からは、なしのつぶてだったり、けっこう娘のポスターゲットに苦労したんですが、ある店舗のマネージャーさんは「ディスプレイが終わったら、連絡をしますよ」と言ってくれ、言葉どうり、12月に入って、「もうディスプレイが終わったから、ポスター取りに来てください」と電話をくれたのでした(喜)。
でゲットしたJのポスター。この「たからもの物語」の入り口にある、でっかいショウウィンドー用と、店舗内のちょっとサイズが小さいもの、違う表情、違う服を着た写真、全部で5点も、いただけました。もう、超嬉しかった! やっとJのポスター、ゲットですっ
その後、一番大きいポスター(横1m、縦・約1.2mのもの)用にオーダーメードで額縁を作り、今、その写真、我が家の壁に飾られています(^^) 自分がわかるのかJ、それを指差して「じっ、じっ(自分の名前が、まだ言えない<笑)」と言って、喜んでいます。
この次は、ターゲットの店舗内写真、ゲット作線を練らねば・・・(この写真は、今2001年1月現在、まだ飾られています<去年9月から)

12月中旬
多分、全米で一・二を争う健康保険会社(アメリカには、日本のような、国民健康保険制度がありません)、Blue Cross/Blue Shield のオーディションが入った。行ってみたら、可愛いオリエンタルの女の子が一杯。以前、例えばAstrix とか、ITT Technical Institute のオーディションなら、Jのような東洋人でもおメメがクリクリ系の子もいれば、「はにわ」の様な顔(失礼っ!)で、目が細くて肌の色も褐色に近いような、アメリカ人から見ると「いかにも東洋人」って顔の子もいた。でも、このオーディションでは、日本人が言う「可愛い顔系」の子供ばかり。「をぉ〜難関だぁ〜」とか、思ました(笑)。
でも、そこになぜか、Carson君母子が登場。そのときオーディションに来ていたのは、大人(若い女性、男性、おじいちゃん・おばあちゃん年令、すべて)も子供も東洋人ばかりだったので、ちょっとびっくり。朝の9時から11時までのオーディションだったので、白人のグループもいたのかも知れませんが、いくら茶色の髪だとはいえ、Carson君が東洋人でやるのは、「??」。

「この前のMervyn's 、どうだった?」と私が聞くと、Carson君のママは「あぁ、やったけど、大したギャラじゃなかったわよ」と、吐き捨てるように言いました。それを聞いて私は内心、ちょっと笑ってしまいました。だって、たとえMervyn's という、baby GAP などに比べたら、かなりランク下のお店とはいえ、新聞のちらしとかじゃない、立派なカタログの仕事。そして、知名度の高いお店の仕事です。
それを、「大したギャラじゃないわよ」なんて言えるのは、Carson君がメジャーな仕事をしている証拠。新聞のちらしに、ホンのちょこっと載っただけで大喜びする親だって、絶対いるはずで、それだって凄いことなのです。ただ、私たちはたまたま、超大手のエージェンシーに入れて、世界レベル、全米レベルの仕事のオーディションに行ける場所にいるから、他の人ならば飛んで大喜びするような仕事でも、「大したことなかった」なんて、言えるんでしょうね。
実際、私も、JがMervyn's の仕事、来なかったときは驚いたって言うか、「えーーーっ?(なんでぇ?うちの子は、もっと有名どころの仕事、してるわよ!)」って、思いましたもん。自分達の子供が、いかにラッキーか、選ばれた一部の人間なのか、認識しておく必要を感じました。

ところでこの日、待ち時間に、Carson君のママが、どうやって息子を大手エージェンシーに入れることができたのか、聞いてみたんです。彼女には、女優の友人がいるそうで、その友達から俳優組合所属で、赤ちゃんを扱うエージェンシーすべてのリストをもらい、片っ端から写真を送ったそうです。その数、20ケ所以上(@@)<私は、2ケ所だった・・・。
そのうち、もっとも早く返答が来たのが、今の事務所(Jと同じ、西海岸最大手エージェンシー)で、Carson君のママが凄いのが、その後、6ケ所くらいのエージェンシーからの誘いもあったけれど、さらに調べて、今の事務所(Jと同じトコ)が、もっとも大きく、メジャーな仕事が可能なところと判断し、決めたんですって。
私みたいに、Jのスナップ写真を2ケ所のエージェンシーに送って、返事が来たところだから、登録・・・なんて行き当たりばったりじゃなくて、すっごくリサーチしているのに、びっくり。まぁ、彼女はロスから2時間も離れた場所に住んでいるにも関わらず、子供の仕事のために走り回っているんだから、熱心さが、違うよね<私とは(^^;)。


さて、このBlue Cross/Blue Shield のオーディションでは、もちろんポラロイド写真を写されるのですが、写真を写したあとも「終わりですか?帰って、いいですか?」と聞く私に「いや、もうちょっといて。子供の様子、感じを掴みたいんだ」と、プロダクションの人。
オーディション用の部屋は広くなく、中にはデスクが一つあるだけ。スタッフも3人ほど。Jは、そのデスクの向こう側に座る男性(あとで、この人がカメラマンだと知る)に向かって、デスクのこっち側からちょこっと目の上だけを出して(ほら、背が低いから、目から上しか、デスク上に出ない<笑)「はぁ〜い」と、微笑んだ。
するとその男性は、「君がJだね。Jって、素晴らしい名前だね。女神様かぁ!(Jの名前は、ローマ神話の女神の名前なのです)」と、Jに向かって話しかける。Jは、精一杯背伸びをして、その男性に向かって手を延ばし、何か話そうとする。端で見ていて、なんだか微笑ましい風景でした。

・・・と、けっこう手ごたえのイイ感じなオーディションだったのですが、ちょっと後悔が残りました。この仕事、撮影が12月の14・15・16・17日のどれからしく、オーディション用紙に、「12/14〜17の撮影は、スケジュール上、可能ですか?」っていう質問が書いてあって、バカ正直にも「12/16日は、他の撮影が入っています」って、書き込んできちゃったんでした。そのせいで、受かる仕事も受からなかったら、とっても残念(;;)
それで、あとからエージェントに聞いたら、「旅行とかで、完全に地元にいないとき以外は、撮影可能って書いておけばいいのよ。それに、たとえ旅行中だとしても、製作側が欲しかったら、いずれにせよ連絡って来るものだから」ですって。ふーーん、「選ばれる」って、そういうことなのね。

そして二日後。スケジュールに無理があるなんて、余計なことを書き込んだにも関わらず、JはBlue Cross の仕事が決まり(^^)、翌日、早朝からグリフィスパークでのロケでした。
朝7時に、肌寒いグリフィスパーク内の児童公園に集合・・したら、スタッフもみんな来たばかりで、撮影の準備もされていない(@@)。
なんと、撮影側が、アリゾナのプロダクションで、カリフォルニア州の「児童労働法」を知らなくて、Jは「今日は、丸一日、撮影予定」だって。それで、スタジオ・ティーチャーが、「それは、法律上出来ない。この子は2才未満だから、何があっても11時半には、終わらないと」と、撮影側に説明。果たして、大急ぎで撮影準備が始まり、8時半頃に撮影が始まった。

スタイリストさんと、ヘアメークさんに、髪の毛の具合を整えてもらう現場のJ。


途中、ちょっとのおむつ休憩と、スナック休憩が入ったとはいえ、Jは、ぎりぎりの11時半まで、約3時間、出ずっぱりで撮影(これ、ちょっと法律上、時間オーバーです。2才未満の児童は、撮影2時間、休憩2時間、食事30分が規定で、現場に最高4時間半しかいられないので)。設定は、公園で遊ぶ東洋人のファミリー(幼児=Jと、その姉=8才くらいと、若い夫婦=父&母、そしておばあちゃん)。
撮影場所がスタジオじゃなくて、公園だったせいかも知れないけれど、それにしても、いつもは9時頃に起きるJが、7時@現場では、もう起きていて、そのまま眠いそぶりも見せずに仕事をする姿に、親としても、驚くやら、感心するやら(@@)。スタジオ・ティーチャーも、「普通、子供はこんなに長時間の撮影なんてできないのに。この子は、凄いわ」と、びっくり。
さすがに帰りの車の中では、瞬間で眠りにつき、そのまま3時間近く、昼寝をしました。で、起きたら元気一杯で、しょうがない、木曜日は午後3時から、地元の母子教室・・・疲れ切っている私でしたが、Jを連れて、教室に行ってきました。マジ、なっがい一日でした(ふーっ)。
ちなみに、このときの写真は、南カリフォルニアにある、30いくつかのBlue Cross の事務所に、CDロムの形で送られ、それぞれの事務所は、向こう一年間、そのCDの中の写真を好きに宣伝に使えるんですって。だから、Jの写真も、ある地域では、ダイレクトメールとかになって、また違う場所では、パンフレットになるのかもしれない。
そうそう、この仕事で、前にJのエージェントに聞いた話は、本当でした。「ギャラで行くなら、有名な服飾ブランドの仕事より、保険会社とか、銀行とかの印刷モノの仕事の方が、ちゃんと usage fee (使用料)が出るんで、いいのよ」ってやつ。だってこの日のギャラ、$1250 (約13万円)だったんですもん!




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----つづく----